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バンドの解散に会社の経営方針・・・「方向性の違い」の危険な正体とは

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ある日突然、お気に入りのバンドの解散を知らされる。その理由は、「音楽性の違い」「方向性の違い」。よくある話です。

しかし、「音楽性の違い」「方向性の違い」について、その具体的な内容を知らされることはありません。

バンドもひとつの「組織」です。それを消滅させてしまう理由とは一体何でしょうか。

バンド活動をしている筆者が実体験から学んだことを、USJの業績をV次回復に導いたことで知られる森岡毅氏の考えに重ね合わせ、見ていきましょう。

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突然のような、理由が思い当たるようなメンバーの脱退

筆者は複数のバンドを掛け持ちしていますが、そのなかの一つのバンドで、あるとき困った事態が起きてしまいました。

あるメンバーが、突然脱退したのです。それも、先のライブの予定が決まっていたにもかかわらず、というタイミングでのことです。

彼は突然LINEグループで脱退を表明し、次の瞬間にはグループを抜けてしまいました。ですから、話のしようがありません。せめて決まっている日程だけはこなしてからにしてくれないか、そのように交渉する手段も断ち切られてしまい、筆者らは困惑してしまいました。

結果、メンバーの知り合いであるプロプレイヤーにギャランティを支払って穴埋めし、予定どおりにライブを切り抜けました。

しかし、そこから程なくして、また一人、またもう一人、とメンバーが抜けていったのです。この2人は、ひとりは持病の悪化、もう一人は忙しさを理由にしたものでした。

しかし偶然とは思えない短期間の連鎖的な脱退だけに、筆者には何かあるのではないか、と疑問が残ります。

突然ヘビメタに目覚めたわけではない

さてその後は、残ったメンバーで緊急会議です。

筆者としては、当初は「抜けられた側である自分達も、何が悪かったのか考え、反省するところはすべき」そう思っていました。

ただ、ふとよぎったのが、「方向性の違い」という、プロミュージシャンの世界によくある言葉です。

筆者らが主に演奏しているのはいわゆる「フュージョン」「クロスオーバー」と呼ばれるジャンルの音楽です。

しかし、別に彼がある日突然、全く異なるジャンルであるヘビーメタルに目覚めたからやめる、などというわけではありません。

好きな曲のジャンルに同じ傾向があるために加入してくれたメンバーですし、当初は楽しそうに、誰のどの曲が素晴らしい、次はこんな曲をやりたい、と飲みながら話していました。

他のメンバーが「ここはこういう風に工夫した方がかっこよくなるよ」と言えば、それも不満もなく受け入れ、スタジオでは楽しそうに見えていました。

では、そんな彼に脱退を決意させたのは何なのか。それがまさに、「方向性の違い」だったのです。

バンドが「観客に提供したいもの」は何なのか


アマチュアの場合は特にかもしれませんが、音楽とどう関わっていきたいかは人それぞれです。もちろん仲間といる方が上達してはいくのですが、課題はその先にあります。

筆者の場合は、会場と一体感を得るために「会場を楽しませる」ことが好きです。「すごかった」よりも「楽しかった」と言われるほうが褒め言葉として嬉しく感じることの方が多くあります。

もちろん両者が揃っていてほしいことに間違いはありませんし、「すごかった」と言われて嬉しい思いをしたこともあります。

場所やお客さんの層で立ち振る舞いを決める、といったところでしょうか。

よって、ステージの途中でも客席からお酒を差し出されれば飲みますし、笑いの要素や店の売上を考えて「お酒持ってきてー!」という芸をやることもあります。そういったキャラクターが筆者の売り物として定着しています。

ただ、これはあくまで筆者の考え方にすぎません。音楽活動を続ける中で、全員が筆者のような考えを持っているわけではありません。

違うメンバーから見れば、それが単に「酒にだらしないだけ」と映ることもあるでしょう。「ストイックに真面目に演奏して、少しでもいい音を届けたい」という人もいるわけです。

さて、ここは趣味の場所です。どちらの考えが正しいでしょうか?

これには、答えはありません。

そしてこれこそが、筆者らにとっての「方向性の違い」だったのです。

エンターテイナーでいたいのか、演奏家でいたいのか。そこが全く違ったというのが最も大きな要素だったのです。

また、脱退したもう一人のメンバーも、バンドに対する似たような方向性の違いを、ある人に吐露していたこともわかりました。もっと言えば、筆者らの間では、「観客に提供したいもの=売りたいもの」が異なっていた、ということになります。

プロであればなおさら、さまざまな事情があることでしょう。事務所、プロデューサー、といった他の意見者も出てくるからです。また、お金の流れも絡んでしまいます。

筆者らは「カレーすき焼き」の状態にあった

幸い、筆者らバンドは新しいメンバーを迎え入れ解散は免れました。

ステージでのパフォーマンスという「売り物」において考え方の相違はあっても、「上手くなりたい」という気持ちは筆者らメンバー全員にとって同じことです。

同様に企業組織においても、誰もが

「良いパフォーマンスをしたい」
「良い製品を作りたい・売れる製品を作りたい」

と考えていながらも、どこかですれ違ってしまうことはよくあるのではないでしょうか。

企業が消費者に「売りたいもの」とは何なのか

筆者らのこのドタバタはあくまで趣味の範囲での出来事です。

しかし企業活動として顧客にサービスやモノを販売し続けなければならない、となると事態は大きく異なります。

大阪・USJの業績をV次回復に導いたことで知られる森岡毅氏は、自著のなかでマーケターの心得をこのように語っています。

ある人はカレーライスが良いという、別の人はすき焼きが良いという。そんな時に多くの会社では、誰かが頑張らないと「カレーすき焼き」を作って消費者に提供してしまうことになります。(中略)消費者がカレーライスを食べたいとわかった時に、あなたが取るべき行動は、社内をカレーライス一本でまとめることです。決して「カレーすき焼き」を作らせてはいけません。

誰が何と言おうと、たとえ社長が「すき焼きが良い」と言っても、カレーライスで説得しなくてはいけません。消費者の求めるベストであるカレーライスで押し通す。それができなければ会社を勝たせることができないのです。

森岡毅「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」p36

筆者らは、ずっと「カレーすき焼き」の状態にあったと言えます。メンバーの一部は「エンターテイナーでありたい」、別の一部は「演奏家に徹したい」という状況で、その様子は後日映像を見れば明らかです。そこは筆者にとっても悩み事ではありました。

そうしたステージ作りのことを詳細に意思統一する時間を設けることがなかったのも事実です。

そして、筆者ら一部は酒を手に観客とはしゃぐ、しかし一方ではその姿を笑みさえ浮かべず、むしろ冷ややかに見ているメンバーもいる。

まさに「カレーすき焼き」なのです。

そして、その状態を放置したことによって、突然、あるメンバーの不満が噴出したわけです。

同じ方を向くことの重要性

企業活動となれば、当然こうした「方向性の統一」は欠かせないものといえます。

ものを作って売るにあたって、例えばブルーカラーとホワイトカラーの間に考えの違いがあるかも知れません。

ブルーカラーは技術の粋を求めるが、ホワイトカラーは低価格を求める、といったような感じです。

同様に、部下と上司のあいだに目指すものの違いがあったり、フロントとバックオフィスで優先順位の違いがあったり…

このような事情を抱える企業は少なくないことでしょう。

しかしそれでは優柔不断なまま、全員が不満を積み上げていく組織になってしまいます。そうした不満は、さまざまな形で突然爆発してしまいます。

現代は多様な価値観がある、という言葉を多く耳にします。しかし組織としては最低限、誰がどこを向いているのかという意思確認と、同じ方を向かせる説得力はやはり重要なのです。

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本記事の著者

アドフレックス編集部

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