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ストップウォッチで動きを計測?マーケティングに留まらない「データドリブン」の可能性とは

この記事は3分で読むことができます

DXの一環としてマーケティング分野で注目されているのが「データ・ドリブン・マーケティング」です。

文字通り「データによって駆動されるマーケティング」の意味で、これまでの「勘と経験」に頼らない販売手法として導入する企業は増えています。

データの力はそれだけにとどまりません。

経営の現場ではマーケティングに限らず様々なデータが使われており、業務改善に繋げている事例もみられます。

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顧客データ分析が社内常識を覆す

現在では特定の商品の売れ行きだけでなく、顧客の好み、年齢層、行動様式、天候との消費行動の関係、店舗での動線など様々なデータを取得し、処理・分析することが可能になっています。

そして、多数のデータをもとに経営を進めていく、これがDX時代に求められる「データドリブンマーケティング」として注目されています。

たとえばJTBでは、データ分析がこれまでの「思い込み」を覆し、新しいジャンルの商品開発に繋がったという事例があります。*1

かつて「出張するならJTB」という広告を出していました。

しかし、利用者のデータ分析の結果、それは男性目線の企画であり、女性の細かなニーズに応えきれるものではなかったことに気づいたのです。

データ分析の結果、得られた情報は例えばこのようなものでした。

まず、女性のほうが出張にかける旅費は、男性より約10%高いということです。また、このような傾向の違いも見えてきたといいます。

ホテルを選ぶとき、男性は近くにコンビニがあるとか、(経費の枠を考えて)料金が8000円以内に収まるといった利便性を重視します。一方、女性は女性専用フロアがある、アメニティーが充実しているなど快適性を求める傾向があります。

引用:「旅立つ人の心、データで読み解く JTBのデジタル戦略」日経スタイル

JTBはこうしたデータを商品開発や広告に生かすため、さらにキーワードの読み取り作業に乗り出しました。その結果、このような結果が得られたといいます。

「出張する女性のキーワードは『タバコの臭いが残る部屋は生理的に嫌』というペイン(苦痛)、『毎日続けているヨガをホテルでもしたい。でも化粧を落としたら外に出たくない』というデザイアー(欲求)などでしょう。そういう内面を踏まえ、その人に語りかけるような広告をつくったところ、反応率が45%以上という非常に大きな効果がありました」

引用:「旅立つ人の心、データで読み解く JTBのデジタル戦略」日経スタイル

データをきっかけに、「出張女子」という新たなカテゴリを作り、広告の反応率アップにつなげたというわけです。

事業・業務改善への足がかりにも

このようなデータドリブンによるマーケティング成功事例は多く存在していますが、データ分析がマーケティングだけでなく、事業や業務の改善点の発見に繋がったというケースもあります。

まず、イギリスの食品スーパー最大手セインズベリー社の場合です。*2

国内にある400店舗の購買データは膨大なものでしたが、分析の結果、興味深い事実が判明しました。

取り扱っている7万5000のSKU(=Stock Keeping Unit、小売業での在庫管理単位)のうち、3万品目は合わせても全体の売上の1%にしかなっていなかった、ということが判明したのです。

もちろん、この3万品目を全て廃止するわけにはいきません。

しかし、精査の結果、総売上高を12%伸ばしただけでなく、1万4000のSKUを品目削除することでベストセラー商品に集中することも可能になりました。

事業の形を大きく変化させた事例といえるでしょう。

また、顧客データが人員配置について考えるきっかけになりそうな事例もあります。

米IT大手のイントゥイットの場合です。*3

同社が提供している会計ソフト「クイックブックス」のシングルライセンスユーザーである中小企業が、1年間に800回もカスタマーセンターに問い合わせをしていたことがわかったのです。毎日2回以上の計算です。

カスタマーセンターには回線費用だけでなく、人件費も投入されています。こうした事実を把握できれば、例えばカスタマーランクごとに違う窓口を設置するなどすれば、人員配置の合理化も可能になることでしょう。

想定外の事実をデータが示すこともあるのです。

店員の行動量を把握して人員最適化

さて、データを活用した人材配置の効率化として、興味深い事例もあります。セブンイレブンです。*4

人手不足は多くの企業の課題になっています。セブンイレブンも例外ではなく、人材管理に3つの課題がありました。

  • シフトと作業割当が連携していない
  • 作業割当をシフトにあわせて作成
  • 作業割当が機能していない

これによって、作業割当とシフト作成にマネジャーやオーナーのほとんどの時間が割かれてしまう、という状況が生まれてしまっていたのです。

多くの小売・飲食業に共通する状況でしょう。

これを解決したのが、従業員の動きの徹底解析です。

セブンイレブンの「省人化プロジェクト」は、ストップウォッチを店舗に持ち込むところから始まりました。

まず、全ての作業の洗い出しです。

全従業員について移動、レジに何分、品出しに何分など、それぞれの作業にかかる時間をストップウォッチで計測し、本当に必要な人の数や時間を割り出すのです。

この作業を通して見えてきたのは、作業量とシフト人員のミスマッチ。不必要な人数が配置されている時間帯がある一方で、少ない人員で不可能なほど多くの業務をこなしている時間帯もある。これが「人が足りない」の実情であり、従業員の「忙しすぎる」という不満や定着率低下の原因でもあると、考えた。

引用:日本経済新聞社「まるわかり!HRテクノロジー」p91

この現実を起点に、まず作業割当とシフト表をデジタルで改善することが可能になりました。

そして、人材利用についての新しい考え方につながっています。

もちろん、上記のような課題の一番単純な解決方法は、余剰人員に忙しい時間帯に回ってもらうことです。

しかし、従業員にも都合がありそう簡単にはいきません。

そこで、セブンイレブンはこの事実を前向きに捉え、「人員に余裕がある時間帯には売上を上げる仕事を追加する」という方法もあると考えています。

暇すぎる、忙しすぎる、という状況はどちらも従業員のモチベーションを下げてしまいます。こうしたモチベーション低下を防ぐことも可能になります。

また、利用客にも利便性をもたらします。混雑時間のレジ待ちが長い、欲しい時間帯に欲しい商品がない、そのような事態を防ぐことができます。

かつ、店舗の利益率が向上すれば、それを従業員に還元することもできるでしょう。

データドリブン人事」とも呼べそうです。

そして見えてきたのは、このような事実でした。

「データ」と「ヒト」の新しい関係を

人間の行動をデータで機械的に扱う、ということに抵抗のある人は少なくないかもしれません。

しかし、ビジネスの広い領域でデジタル化が進み業務の形も変化している中、人員管理について「これまでの慣習どおり」「勘」だけでは追いつかず、非効率になってしまっているケースはよくあるのです。

もちろん、データで得られるものが全てとは限りません。

しかし、思い込みを排して客観的事実を教えてくれるデータが、ヒトに働きやすさをもたらす良い相棒になる時代がやってきているのもまた現実といえるでしょう。

【参考資料】

*1 「旅立つ人の心、データで読み解く JTBのデジタル戦略」日経スタイル

*2 マーク・ジェフリー「データ・ドリブン・マーケティング」p191

*3 マーク・ジェフリー「データ・ドリブン・マーケティング」p188

*4 日本経済新聞社「まるわかり!HRテクノロジー」p91-p92

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本記事の著者

アドフレックス編集部

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