コラム

カスタマージャーニーマップ活用事例6選と制作・活用ポイントを徹底研究

TIPS 基礎知識
この記事は6分で読むことができます


カスタマージャーニーマップを有効活用すれば、複雑な顧客の行動や感情を可視化し、施策の最適化へとつなげられます。

しかし、下記の悩みを抱えているマーケティング担当者は多いはずです。

「具体的な活用方法が知りたい」
「作成したけど、有効活用できていない……。」

そこで本記事では、カスタマージャーニーマップの活用事例6選と事例から学ぶポイントを解説します。

カスタマージャーニーマップの作成と活用のヒントを得るきっかけになればと思います。

1.カスタマージャーニーマップとは

カスタマージャーニーマップとは:
認知から購買に至るまでの購買プロセスに関連する顧客との接点や行動・思考などを時系列に可視化したマップのこと。

現代の消費者は平均して3~5つのチャネルを行き来しており、購買行動が複雑化しています。

カスタマージャーニーマップを作成すれば、複雑な購買プロセスがビジュアル化されます。

つまり、購買プロセスの各ステージにおける顧客の課題やニーズを把握できるようになり、最適な顧客体験を提供できるようになるのです。

2.なぜカスタマージャーニーマップが必要なのか?

BtoB・BtoCを問わずさまざまな業種で顧客行動が多様化しています。

Web広告やアプリ・Webサイト・SNS・実店舗などさまざまなチャネルで顧客と企業はコミュニケーションをとっています。しかし、各チャネルで最適な顧客体験を提供できているでしょうか。

営業やマーケティング、カスタマーサポートなど各部門はKPIを強く意識する傾向にあるが、それと同じくらい顧客の感情や課題を理解することは重要。

なぜなら、顧客は「この課題を解決したい」などの感情を抱くことにより、行動を起こすからです。

カスタマージャーニーマップの作成をすれば、顧客の思考や感情を知り、部門を超えて共通認識を持った施策展開が可能となります。

その結果、全社を通して顧客視点の施策展開を推進でき、顧客体験や売り上げ、LTVの向上などが見込めるのです。

3.カスタマージャーニーマップの作り方

カスタマージャーニーマップの設計手順は以下の通りです。

  • ペルソナの作成
  • タッチポイントの洗い出し
  • 顧客行動と感情の検討
  • カスタマージャーニーマップの分析
  • 定期的なアップデート

製品の改善や市場の変化、トレンドなどにより顧客行動は変化します。

常に最適な顧客体験を展開するためにも、定期的にカスタマージャーニーマップをチェックし、必要に応じてアップデートするようにしましょう。

カスタマージャーニーマップの詳しい作成手順は、下記記事で解説していますので、ぜひこちらも参考にしてください。

4.カスタマージャーニーマップの活用事例6選

ここからは、カスタマージャーニーマップの具体的な活用法をイメージできるように、企業の活用事例をご紹介します。

4-1.HubSpot

出典:How HubSpot Created Its Customer Journey Map│HubSpot

英語版のHubSpotブログは、カスタマージャーニーマップの制作方法を詳細に紹介しています。

HubSpotはサブスクリプションビジネスを展開しているため、「購入」「オンボーディング」「通常使用/リニューアル」のカスタマージャーニーになっている点が特徴です。

主な構成内容は以下の通りです。

  • 購買プロセス
  • ポジティブな体験要素
  • 決断要素
  • ネガティブな体験要素
  • タッチポイント
  • 関与する部署
  • 顧客の声

カスタマージャーニーマップのデザイン自体はシンプルですが、絵文字の活用や色分けなど細かな工夫がされています。

特に参考にしたい点が、顧客の声を記載していることです。顧客の声を入れることにより、従業員は顧客視点を持てるようになっています。

4-2.株式会社パソナ パソナキャリアカンパニー(Web担当者Forum参考)

出典:2時間で作るカスタマージャーニーマップ――実例とともに考える新しい「おもてなし」のカタチ|Web担当者Forum

株式会社ロフトワークは、パソナキャリアにおける新卒採用のためのWebサイトリニューアルに伴い、新卒者をペルソナにしたカスタマージャーニーマップを作成しました。

Webサイトの目標は新規事業を創出できる人材の獲得です。

最小限の時間で高品質のカスタマージャーニーマップを作成するため、まずターゲットに合致する条件の学生に協力を依頼しました。

ワークショップ形式で作成を進めたことで、効率よく学生が抱える課題を洗い出すことに成功し、2時間でカスタマージャーニーマップを完成させたのです。

主な作成手順は以下の通りです。

  • ペルソナ行動の収集
  • ペルソナの思考や感情の収集
  • 課題のディスカッション
  • ペルソナ行動とタッチポイントの選定
  • 課題の抽出

カスタマージャーニーマップ作成の結果、すべてのフェーズにおいてペルソナは「入社したい企業について十分な情報を得ることができない」という課題を抱えていると判明しました。

この課題を改善するために、新卒者と社員が直接交流できるイベントを数多く開催し、WebサイトやSNSは集客チャネルとして活用することにしました。

4-3.LANCOM

出典:How Ecommerce Brands Can Create a Conversion-Powered Customer Journey Map│the good

化粧品メーカーのLANCOMは、ブランドエクスペリエンスを高めるためにカスタマージャーニーマップを作成しています。

顧客の購買プロセスを「On my way(LANCOMへたどり着く途中)」「Getting Lancome(LANCOMを知る)」「Share experience(経験の共有)」と独自に定義しているのが特徴です。

各ステージにおけるペルソナの悩みや疑問、割引やクーポン、無料サンプル、カスタマーレビュー、インフルエンサーマーケティングなどのタッチポイントとして機能するメディアなどがマッピングされています。

この事例のように、顧客の悩みや疑問を網羅的に把握することで、カスタマージャーニーを通して円滑な体験を提供できるようになります。

4-4.三井住友銀行

三井住友銀行は、CJMM(Customer Journey Map Management)と呼ばれるカスタマージャーニーマップを用いて一貫性を持った価値ある体験を提供する手法を展開しています。

三井住友銀行がCJMMを導入した理由は、事業が多岐にわたり部署数も多いため、全体を一貫して管理することができていなかったためです。

そこで同社は、下記のような階層でCJMMを作成しました。

出典:デザインチームが推進するカスタマージャーニーマップ・マネジメント|note(三井住友銀行の公式アカウント)

ビジョン:目指す姿

コンセプト:ビジョン実現のためのデジタル戦略

ビジネスジャーニーマップ:オンライン・オフラインのタッチポイントを軸に個別案件を統合したマップ

カスタマージャーニーマップ:個別案件で活用する具体性のあるマップ

UXフロー:インタラクションや画面レベルで作成するフロー

もともと同社には顧客視点が社内に浸透していましたが、各ビジネス部門が担当するプロジェクトに注力することで、個別最適化となる傾向にありました。

しかし、カスタマージャーニーマップをマネジメント手法として用いることにより、顧客視点に立ち返ったアイデア出しや顧客体験の全体像を踏まえたうえでの施策展開が可能になりました。

4-5.株式会社コンセント(亀田製薬事例)

出典: 亀田製菓“Better For You”を届けるコーポレートサイト|CONCENT

米菓事業のリーディングカンパニー亀田製菓は、ファンの創出を目的にコーポレートサイトのリニューアルを決めます。

まずは社内でアンケート調査を実施し、ファン指標の定義と米菓に興味がある属性の探索をしました。

その結果、「小さな子どものいる親」かつ「米菓好きで亀田製菓は知っているが、選ぶときは企業名を認識していない」層をターゲットに設定します。

次に、対象となるペルソナがファンへ行動変容するまでの行動や感情を出し合うワークショップを4回に渡って実施しました。

その結果、ペルソナは「家族だんらんが楽しくなる」「安全性や栄養面で信頼できると思える」体験をすることでファンになるというカスタマージャーニーマップを作成します。

カスタマージャーニーマップの内容を、コーポレートサイトに反映させた結果、ブランドが目指すべき姿やターゲットに刺さるコンテンツ制作ができています。

4-6.Chal-tec

Chal-techはベルリンに拠点を置く大型ECサイトです。

もともとはDJ機器専門店として創業しましたが、Amazonの席巻によりあらゆるカテゴリーの製品を取り扱うECサイトへと方向転換したのです。

これらの方向転換により、年間110億円以上の売り上げを誇る大型ECサイトになりましたが、DJ専門機器時代の熱心なファンを失ってしまいます。

同社はファンを取り戻すため、AIによる顧客体験パーソナライズプラットフォームDynamic Yield(ダイナミックイールド)」を導入しました。

その結果、複数チャネルを横断しての細やかなパーソナライズ体験の提供が可能になりました。

具体的には、AIがリアルタイムでユーザー分析をし、DJ愛好家にはパーソナライズ化したWebサイトを表示したのです。

カスタマージャーニー全体で、パーソナライズ体験の提供ができるようになったことで、全体のコンバージョン率が27.6%向上しました。

この事例の詳細については、下記記事をご参考にしてください。

カスタマージャーニー全体をシームレスに最適化してサイト改善!CVRを27.6%上昇させた大型ECサイトChal-Tec事例

5.事例から学ぶ効果的なカスタマージャーニーマップ活用ポイント

5つの事例より、カスタマージャーニーマップ作成においては下記ポイントが大切だと言えます。

  • 目的を明確にする
  • 顧客の協力を得る
  • 自社に適した購買プロセスを定義する
  • 複数のカスタマージャーニーマップを作成する
  • 作って終わりにしない

それぞれのポイントの詳細について見ていきましょう。

5-1.目的を明確にする

まずはカスタマージャーニーマップを作成する目的を明確にしましょう。

目的によってカスタマージャーニーマップの内容は異なるためです。

【例】
Web広告からのコンバージョン率改善が目的ならば、認知からコンバージョンに至るまでの顧客課題や悩みを可視化することが重要。

その結果として最適なチャネルの選定や商材の訴求ポイント、LPの改善策などにつながります。

そのほかにも、LTVの向上やファンの創出、採用などさまざまな目的のカスタマージャーニーマップが考えられます。

5-2.顧客の協力を得る

カスタマージャーニーマップとは:
「実在する顧客」が認知から購買に至るまでの行動や感情などをマッピング化したもの。

そのため「自社製品を使うのはこんな人」や「きっとこのような課題を持っているはず」など、担当者の願望や思い込みが混じった実在しない顧客を主役にするのはやめましょう。

このようなケースではカスタマージャーニーマップを作成しても、期待した成果にはつながらず、最悪の場合は施策混乱の原因となります。

カスタマージャーニーマップ作成の際には、顧客の声を収集しましょう。

顧客を招き、ワークショップ形式でカスタマージャーニーマップを作成すれば、短い時間で顧客の感情や思考を詰め込んだマップを制作できます。

顧客の協力を得られない場合は、営業やカスタマーサポートなど顧客と直接交流をする部門のメンバーに参加してもらいましょう。

顧客解像度の高いメンバーが作成に参加することで、質の高いアイデアが生まれます。

5-3.自社に適した購買プロセスを定義する

現代の顧客行動は多様化しており、必ずしも「認知 → 比較 → 検討 → 購買」の順に購買プロセスが進むとは限りません。

まずはターゲットの購買行動を理解し、それに適した購買プロセスを定義する。

SaaS系企業のHubSpotの場合、新規顧客の獲得よりも既存顧客に継続してもらうことが重要なため、「購買」をスタートに「オンボーディング」 → 「通常運用」という流れのカスタマージャーニーマップを作成していました。

ターゲットの購買行動を理解したうえで、最適な購買プロセスを定義しましょう。

5-4.複数のカスタマージャーニーマップを作成する

カスタマージャーニーマップでターゲットにするのは、1つのペルソナのみです。

【例】
幅広い年齢層をターゲットにした商材を扱うとしても、ターゲットの属性により購買行動や課題などが異なる。

つまり20代・30代・40代のように複数のペルソナを作成し、各ペルソナに適したカスタマージャーニーマップを作成しなければいけません。

しかし、カスタマージャーニーマップの作成には顧客や関係者調査が必要であり、まとまった時間が取れないと悩む担当者は多い傾向です。

まずは、最も重要なペルソナのカスタマージャーニーマップを作成しましょう。

初めのカスタマージャーニーマップ作成で、有益なインサイトの発見や改善策の創出などにつながれば、関係者の同意を得られるため、スムーズに残りのカスタマージャーニーマップ制作を進められます。

5-5.作って終わりにしない

カスタマージャーニーマップを作ったものの、有効に活用されないケースは多々あります。カスタマージャーニーマップを作成したら、詳細を分析し、施策の立案に反映させましょう。

また、カスタマージャーニーマップは社内のあらゆる部門に最適なツールとなるため、完成したら全社で共有することがおすすめ。

例えば、印刷したカスタマージャーニーマップを社内に貼りだせば、顧客ファーストの意識が社内に浸透するでしょう。

6.まとめ

事例で見てきたように、カスタマージャーニーマップを有効活用すれば、顧客理解を深められ、各施策の最適化を達成できます。

しかし、ただカスタマージャーニーマップを制作するだけでは、期待した効果は得られません。

大切なポイントは、顧客の声に耳を傾け、より良い顧客体験の創出につなげることです。

ぜひ本記事でご紹介した活用事例を参考に、カスタマージャーニーマップの制作に取り組んでみてください。

【3分で理解】Cookie(クッキー)とは?今さら聞けない意味やメリット・デメリットを分かりやすく解説
マーケティングにおけるペルソナの作成手順 | メリットや注意点も解説
もう迷わない!デジタルマーケティング戦略を立てる5つの手順を解説
本記事の著者

アドフレックス編集部

アドフレックス・コミュニケーションズ公式アカウントです。

アドフレックス・コミュニケーションズ公式アカウントです。