カスタマージャーニーマップとは?重要な理由や作成手順を解説
マッキンゼーの調査によれば、現代の消費者は平均して3~5個のチャネルを行き来して、購買するかどうかを決定しています。
企業と顧客はさまざまなチャネルで接点を持つからこそ、各チャネルにおいて最適な体験を届けなければいけません。
カスタマージャーニーマップを作成すれば、各購買フェーズにおける顧客との接点や顧客行動/心理を可視化できるため、効果的に顧客体験を改善できます。
しかし、「カスタマージャーニーマップの作り方が分からない」や「Web広告の運用にも必要なのか?」と悩むマーケティング担当者は多いものです。
そこで本記事では、カスタマージャーニーマップの特徴や重要な理由、作成方法、Web広告への活かし方などを解説します。
目次
1.カスタマージャーニーマップとは
カスタマージャーニーマップとは:
購買フェーズごとにおける顧客と企業の接点や顧客の心理感情などを時系列で可視化したもの。
カスタマージャーニーマップは、主に以下の項目で構成されます。
- 顧客とのタッチポイント
- 各フェーズにおける顧客の思考や感情
- 顧客にとってもらいたい行動
- 行動した結果顧客が抱いた不満
カスタマージャーニーマップを作成することで、ブランドは顧客視点に立てるようになり、顧客のインサイトやペインポイント、そして各購買フェーズにおける施策の最適化などが可能になります。
また、カスタマージャーニーマップを導入することで次のようなメリットも得られます。
- チームで共通のユーザー認識を得られる
- 効率よく施策の優先度を決められる
2.カスタマージャーニーマップが重要な理由
カスタマージャーニーが重要な理由は、顧客の期待やペインポイントを正確に把握して、各購買フェーズで顧客に最適な体験を提供できるようになるためです。
PwCコンサルティングの調査によれば、消費者の73%が価格や製品品質に次いで、購買決定における重要な要因として「体験」を挙げています。
また、Salesforceの調査では、消費者の86%が数字ではなく一人の人間として扱ってもらうことを望んでいると発表しています。
この調査は、Webサイトやアプリなどのデジタルタッチポイントにおいても、パーソナライズ化した体験の重要性を示唆している。
それでは、どのように顧客体験の向上やパーソナライズ化した体験の提供ができるのでしょうか。
最適な顧客体験の創出には、深い顧客理解が必要不可欠であり、顧客の感情やペインポイントを明らかにするカスタマージャーニーマップが有効です。
また、Web広告業界においては、クッキー規制の影響でリターゲティング広告などのWebサイト訪問ユーザーの追跡が困難になるため、離脱率の低いWebサイト/LP制作や顧客のリピーター化、自社での顧客情報の収集などが必要となります。
先にご紹介したSalesforceの調査では、消費者の76%はパーソナライズされた製品推奨のために自身の情報を企業と共有することに前向きであると述べています。
またその数は、パーソナライズされたオファーや割引の場合は88%に上りました。
カスタマージャーニーの作成により、Web広告をはじめとした各フェーズでの顧客体験の改善やパーソナライズ化が可能となり、顧客情報の収集やコンバージョン率の向上などを見込める。
3.カスタマージャーニーマップの作成手順
カスタマージャーニーマップの作成手順は以下の通りです。
なお、カスタマージャーニーの具体的な作り方については「別記事」で解説しますので、そちらを参考にしてみてください。
- ペルソナの作成
- タッチポイントの洗い出し
- 顧客行動と感情を考える
- カスタマージャーニーの分析
- カスタマージャーニーの改善
各手順の詳細について見ていきましょう。
3-1.ペルソナの作成
カスタマージャーニーマップは、一人の顧客の購買フェーズにおける行動や感情などを可視化するツールのため、まずは主役となるペルソナを作成しなければいけません。
ペルソナとは:
製品サービスを利用する典型的な顧客像のことであり、主に下記項目で構成されている。
【デモグラフィクス】
- 性別
- 年齢
- 居住地
- 職業
- 家族構成など
【サイコグラフィックス】
- ライフスタイル
- 価値観
- 趣味嗜好
- 購買動機など
ペルソナを設定しなければ、自社と関連性の低い顧客のカスタマージャーニーが完成し、施策に活かせないどころか、施策混乱を招くリスクさえ生じます。
ペルソナを作成する際は、一人の顧客を思い浮かべながら、具体的に設定する。
また、実在する顧客に近いペルソナを作成するためには、可能な限り一次情報に基づいて作成する必要があります。
3-2.タッチポイントの洗い出し
タッチポイントを洗い出す前に、ペルソナの購買プロセスを考えましょう。一口に購買プロセスと言っても、現代の顧客行動は多様化しているため、その種類はさまざまです。
主な購買プロセスのモデルは以下の通りです。
【AIDMA】
「注目」 → 「興味」 → 「欲求」 → 「記憶」 → 「行動」
【AISAS】
「注目」 → 「興味」 → 「検索」 → 「行動」 → 「共有」
【AISCEAS】
「注目」 → 「興味」 → 「検索」 → 「比較」 → 「検討」 → 「行動」 → 「共有」
【AIDA】
「注目」 → 「興味」 → 「欲求」 → 「行動」
作成したペルソナに該当する購買プロセスを考え、各フェーズにおけるタッチポイントを洗い出します。
なおタッチポイントとは、顧客が各購買プロセスで使用する媒体のことで、WebサイトやSNS、検索エンジンなどが挙げられます。
3-3.顧客行動と感情を考える
次に各タッチポイントにおける顧客行動と感情を考えます。
【例】
購買プロセスである「注目」の段階における行動は、Google検索を利用し、その段階における感情は「特定の悩みや課題を解決したい!」など。
基本的に、顧客の感情は「この悩みを解決したい」や「どの製品がよいのか分からない」などのペインポイントがベースとなります。
顧客行動と感情を特定すれば、顧客にとって最適なタイミングで、最適なコンテンツを届けられるようになり、顧客体験の改善が見込めます。
3-4.カスタマージャーニーの分析
カスタマージャーニーを作成したら、必ず分析するようにしましょう。
Web広告が認知の接点になっているのなら、クリック率やコンバージョン率、Webサイトの操作性などを分析します。
カスタマージャーニーを分析すれば、顧客ニーズに応えられていない施策が判明し、効率よく改善施策を展開できるようになるのです。
3-5.カスタマージャーニーの改善
常に顧客が同じ行動をするとは限りません。
自社の認知度や市場状況、トレンドなどにより顧客行動は変化します。だからこそ、定期的にカスタマージャーニーマップを見返して、必要に応じて修正をしましょう。
カスタマージャーニーマップの詳しい作成方法については、下記記事で詳細に解説しているので、ぜひこちらも参考にしてください。
4.カスタマージャーニーマップをWeb広告運用に活かすポイント
カスタマージャーニーマップをWeb広告運用に活かすポイントは以下の通りです。
- オムニチャネルの最適化
- 商材の訴求ポイントの選定
- ターゲティング設定の最適化
- ファーストパーティデータの収集
それぞれのポイントについて見ていきましょう。
4-1.オムニチャネルの最適化
オムニチャネルとは:
店舗やWebサイト、SNS、アプリなどオンライン/オフラインを問わずにあらゆるチャネルを連携させ、顧客へアプローチする施策のこと。
現在の顧客は、Webサイトやアプリ、店舗などを横断型で情報収集をし、意思決定をするのが一般的になっています。
【例】
自社サイトに訪問したユーザーに、ディスプレイ広告やSNS広告を表示すれば、顧客が商品を購入するなどのコンバージョンにむすびつく可能性がある。
顧客行動が多様化した現代において、顧客が好きなタイミングで購入できる仕組みを構築するオムニチャネルは有効な施策となる。
カスタマージャーニーマップを作成すれば、顧客とのタッチポイントや各段階における顧客心理が明確化するため、オムニチャネル戦略の最適化につながります。
その結果、Web広告でリーチしたターゲット層を効率よく顧客やリピーターに変えられるようになるのです。
4-2.商材の訴求ポイントの選定
Web広告で成果を出すためには、ユーザーにとって魅力的なクリエイティブを作成する必要があります。
そして、魅力的なクリエイティブとはユーザーの悩みや課題の解決策を伝えたもの。
カスタマージャーニーマップを作成すれば、ペルソナのペインポイントやニーズが判明するため、それらをクリエイティブに反映することで、クリック率の改善が見込めるでしょう。
4-3.ターゲティング設定の最適化
Web広告は膨大なユーザーにリーチできるからこそ、ターゲティング設定で自社と関連性の高いユーザーのみに広告配信をしなければいけません。
不適切なターゲティング設定は、広告品質の低下や費用対効果悪化の原因となります。
カスタマージャーニーマップの作成においては、実在する顧客をイメージできるまで具体化したペルソナの作成が必須だとお伝えしました。
ペルソナ情報をターゲティング設定に反映すれば、自社と関連性の高いユーザーにリーチできる確率が高まる。
4-4.ファーストパーティデータの収集
先にお伝えしたように、パーソナライズ化した顧客体験を提供すれば、顧客は自身の情報を積極的に企業と共有する傾向にあります。
カスタマージャーニーマップの作成をすれば、顧客一人ひとりに合った体験を設計できるようになるのです。
それではなぜ、Web広告においてファーストパーティデータ(自社で集めた顧客情報)が重要なのでしょうか。
その理由は、個人情報保護やプライバシー懸念の高まりにより、クッキーが規制され始めているからです。クッキーが規制されると、自社サイトに訪問したユーザーに再度広告を配信するリターゲティング広告の活用が困難になります。
なぜリターゲティング広告の活用が困難になるのかというと、Webサイトのドメインを横断しながらトラッキングを可能にするサードパーティクッキーが規制されてしまうためです。
一方、ファーストパーティデータは、Webサイトを横断したトラッキングは不可能であるためクッキー規制の影響を受けません。
【例】
Google 広告では自社で収集した顧客データを活用して、顧客や類似顧客に広告を配信する機能があり、これはクッキーの規制を受けずに利用できる。
顧客情報を保有していれば、特定のユーザーに広告を配信できるようになるため、広告パフォーマンスの向上に期待できます。
5.カスタマージャーニーマップ成功事例
ベルリンに拠点を置く「Chal-tec」は、もともとDJ機器専門店として創業しましたが、EC市場の大流行により家電やスポーツ用品など幅広い製品ジャンルを取り扱う企業へと変貌しました。
この転換により、大きな成功を収めた一方、DJ機器を好む顧客の信頼を失う事態に陥ります。
そこで、AIによる顧客体験パーソナライズプラットフォーム「Dynamic Yield(ダイナミックイールド)」の導入を決定しました。
顧客体験を重視するパーソナライズプラットフォームを活用することにより、複数のチャネルを横断し、細かなパーソナライズ体験の提供が可能になりました。
また、自社が保有する顧客データから、DJ愛好家を特定し、DJ愛好家にはパーソナライズされたWebサイトを表示されます。
カスタマージャーニーの各フェーズでパーソナライズ体験を提供することにより、全体のコンバージョン率が27.6%アップするという成功を収めました。
成功事例の詳細については、下記記事よりご確認ください。
6.カスタマージャーニーマップ作成の注意点
カスタマージャーニーマップを作成する際の注意点は以下の通りです。
- 組織横断で作成する
- 主観や願望を排除する
- 素早く制作する
ここからは、各注意点について解説します。
6-1.組織横断で作成する
カスタマージャーニーマップは、マーケティング部門で作成されることが多い傾向です。しかし、顧客の購買プロセスにはマーケティングだけではなく、営業や製品開発、カスタマーサポートなどのあらゆる部門が関与します。
だからこそ、あらゆる部門の人材が集まって、カスタマージャーニーマップを作成することが望ましい状態となる。
特に、営業やカスタマーサポート、カスタマーサクセスなどの顧客と直接コミュニケーションをとる部門には、可能な限り協力してもらいましょう。
顧客の解像度が高いメンバーに参加してもらうことで、正確で具体的なニーズやペインポイントなどが判明します。
6-2.主観や願望を排除する
カスタマージャーニーマップでよくあるミスが、担当者の主観や願望が混じってしまうことです。
「自社製品を使う人は、このような行動をとるはず」などの主観が入ってしまうと、誤ったカスタマージャーニーマップが完成し、施策混乱の原因となります。
カスタマージャーニーマップの制作には、顧客の声やデータなどを用いるようにしましょう。
6-3.素早く制作する
カスタマージャーニーマップの制作はゴールではありません。ゴールとは、カスタマージャーニーマップを活用して、顧客体験の改善や各施策の最適化を進めることです。
だからこそ、カスタマージャーニーマップは素早く制作するようにしましょう。
初めて制作する場合、細部までこだわりすぎて、完成までに時間がかかりすぎるケースは多々あります。
まずはできる範囲で素早くカスタマージャーニーマップを作成し、徐々に精度を高めるようにしましょう。
7.顧客体験を最適化するにはAIツールの導入がおすすめ
カスタマージャーニーマップを作成したら、各チャネルにおける顧客体験の改善やパーソナライズ化を実施しなければいけません。
しかし、パーソナライズ化した顧客体験の提供には、顧客の属性や購買行動、興味関心などの膨大なデータを分析する必要があるため、ツールの導入が有効です。
初めて顧客体験のパーソナライズ化に取り組んだり、何から手をつけていいのか分からなかったりする場合は、AIがあらゆるタッチポイントでパーソナライズ体験を提供するDynamic Yield(ダイナミックイールド)がおすすめです。
Dynamic Yieldを使えば、機械学習と予測分析AIがリアルタイムで訪問ユーザーを分析し、Webサイトデザインや広告クリエイティブ、製品レコメンドなどをパーソナライズ化できる。
従来のパーソナライズ化では精度の低さが課題でしたが、Dynamic Yield(ダイナミックイールド)なら高精度のAIによりパーソナライズ精度を最適化できます。
デジタルマーケティングに注力している企業は、ぜひ導入を検討してみてください。
8.まとめ
カスタマージャーニーマップの作成により、各購買プロセスにおけるタッチポイントや顧客の行動・感情などを可視化できるようになります。
カスタマージャーニーマップを制作したら、各タッチポイントにおける施策を検証し、顧客体験の改善に注力しましょう。
本格的に顧客体験のパーソナライズ化を検討しているのなら、ツールの導入は欠かせません。「Dynamic Yield」なら、AIが自動で精度の高いパーソナライズ体験を構築するため、業務負担の軽減や売り上げの最大化などを見込めます。
パーソナライズ化に興味があるものの、具体的な方法が分からない企業にこそおすすめです。
アドフレックス編集部
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